
大切な人へ
第56章 公認彼女
ー晄人sideー
美優がぶたれた次の日に 俺は井川に会いに行った
部活で彼の弟からそれとなく
だいたいのいつも帰る時間を聞いて
あいつの家の最寄り駅で待った
『井川!』
駅から出てきて声をかけると少し驚いた様子で
でも俺を無視して歩き出してた
『美優のこと返してもらう。約束破ったからな
笑わせるって 幸せにするって言っただろ?
どうしたんだよ』
立ち止まって 黙ったまま俯いてた
家庭教師の生徒が俺の姪なのは知らなかったようだ
『昨日彼女...誰かにぶたれたみたいだった
顔赤くなってて湿布貼ってたよ』
「誰かって誰だよ」
やっと出した声は低くて怒っている様だった
『しつこく聞いたんだけど教えてくれなかった
自業自得だとか言ってたけど
俺が井川にされたのかって言ったら怒られた
彼女が怒ったの初めて見たよ
すごい剣幕で怒鳴られた
井川くんはそんな人じゃない‼ってさ』
「 ...... 。」
『どうして彼女を避けるんだ?会いたがってる』
「...合わせる顔なんてない」
『お前が?
美優は謝りたいって。大事な人だからって言ってたぞ』
少し驚いた様子で しばらく黙って俺を見ていた
何にも知らないならもう口出すなって言って
彼は帰って行った
でも井川は言ってた
悪いことをしたって
美優はお前のことがずっと好きだったよって
返してもらうけどいいんだなって言ったら
「そうしてやって。あいつも喜ぶ...」
悲しそうに少し笑ってた
