
大切な人へ
第9章 伝えたい
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約束に遅れないように仕事を終わらせ
彼女を迎えに行った
車に乗ると
『お疲れ様です』
彼女は微笑んでそう言って
冷えたブラックの缶コーヒーを差し出した
行き先を伝えず運転する俺に
何も言わず景色を眺めている
「ついたよ」
『...わぁ! 降りてもいいですか?』
頷くと彼女は降りてその景色に見とれていた
『綺麗ですね...』
つれてきたのは公園だった
そこは大きな川沿いの場所で
今は夕日が水面に反射して輝いていた
『あの...』
沈黙を破ったのは彼女だった
『この前は飛び出してしまってごめんなさい
それに...先生をこま「中入ろうか」
今度は俺が話を遮って車にさそう
「俺も連絡遅くなってごめん
返事...してもいい?」
彼女はうつむいたまま頷いた
「藍野さんの気持ち嬉しかった ありがとう
付き合ってほしいって言われてたら
答えはNOとしか言えなかったけど
近くにいることはできる。
今までと同じようにいられるから」
『ありがとうございます
でも...NOとしか言えないのはやっぱり
私が生徒で先生が教師だからですか?』
顔をあげて真っ直ぐ見つめる彼女にまた迷う
「そうだよ...タブーだ
認められることじゃない。周りにも世間にも
藍野さんだって彼氏としたい事あるだろ?
一緒に登下校したり、手を繋いで歩いたり
友達と彼氏の話しをしたり...
できない事ばかりなんだ。俺なんかといても」
『言ってることはわかる。
でも、私はそんなことがしたいから
一緒にいたいんじゃない!
好きだからそばに行きたい...それだけなの』
