
飴と鞭と甘いワナ
第4章 scene Ⅳ
やめてくれ
弱ってるとこは、アイツには見せたくない。
『来るな』
ただ一言メールをすればいい。
そう思うのに、指は動こうとしない。
会いたくない
会いたい
見られたくない
傍にいて欲しい
…人間、弱ってる時は人恋しくなるもんなんだろうか
複雑な気持ちが俺の中で葛藤していた。
身体は熱いのに、ぞくぞくしてきた
…熱出たな、こりゃ
そう言えば節々も痛いし、最悪じゃねぇか。
薬なんか、買ってない。
ピンポーン、とチャイムが鳴った。
だけど、起き上がる気力がない。
もう一度鳴らされる。
ー…どうせ雅紀だ。
出なきゃ諦めて帰るだろ。
そう思ってたら
ガチャンとドアの開く音がした。
あー…
鍵閉めてなかった?
そんな余裕もない程、俺いっぱいいっぱいだったのか。
「にの?…入るよ」
恐る恐る、と言った感じでリビングのドアから
…雅紀が顔を覗かせた。
「鍵、開いてたから入って来ちゃった」
「…不法侵入」
思わず睨む。
本当は嬉しいくせに。
