
飴と鞭と甘いワナ
第6章 HurryUp! episode 1
「しょうがないだろ?
…それににのだって、山田とか呼んでんじゃん」
ー…家か外かの違いじゃないのかよ?
だけどこれが、まさに
"売り言葉に買い言葉"
と、なってしまったのに気付いた時にはもう遅かった
「にの…?」
みるみるうちににのの目が潤み始めている
「え、にの、ちょっと?」
それが零れ落ちる前に、自分の服の袖でグイッと拭ったにのは
「もういいっ!!」
そう言って、俺に近くにあった空の紙コップを投げつけると
勢い良くドアを開けて、楽屋を飛び出して行ってしまった
「ちょ…、どうしたんだよ?」
翔ちゃんが心配そうに俺に声を掛ける
「…怒らせた、かも」
そう言ってポリポリと頭を掻いてたら
「焼きもちでしょ、アレ」
潤がバッサリと言い切って
「あ、やっぱり?俺もそう思った」
大ちゃんも話に加わり、何だかいたたまれなくなった
追いかけなきゃ、と思う気持ちと
勝手に怒ってろよ、と思う気持ちが相反する
「追わなくていいの?」
翔ちゃんが読んでいた新聞を畳んで立ち上がった
