
飴と鞭と甘いワナ
第6章 HurryUp! episode 1
駐車場に並ぶ2台の車。
左の山吹色のセンスの良いハイブリッド車が彼ので、その隣の無骨なジープが俺の。
腹立ち紛れにハイブリッドのタイヤを一蹴りしてから運転席に乗り込む。
ふと助手席を見ればドリンクホルダーに缶コーヒー。
少し飲み残しが入ってるそれを買ったのはいつだっけか。
そう…あの日は相葉さんの車に乗って。
家呑みしようぜってコンビニで籠にアレコレ放り込んで
"半分こしよ"
レジ待ちしながら相葉さんが追加した缶コーヒー1つ。
その缶コーヒー繋がりで一連の事をツラツラ思い返せるなんて女々しく痛いヤツだな、俺。
もういっそ当てつけに飲み残しをフロントガラスにぶっ掛けてやろうか…なんて思っても。
やれねぇのは何なんだろう…腹立ってンのに。
ま、とにかくこんなドロドロの感情のまま、顔を会わすと目も当てられない展開になるだろうし、言いたくない事まで言ってしまうのがオチ。
最悪な事態だけは避けたい。
だから今はとかく逃げる。
アクセルを踏んで何処へ行こうか。
"ついていくよ"
ドリンクホルダーの缶コーヒーがカタンと揺れて、俺はウィンカーを左に出した。
