
飴と鞭と甘いワナ
第6章 HurryUp! episode 1
バッグの中で五月蝿くバイブるスマホ。
"誰?"
心当たりを探る。
先ずは相葉さん。
次に楽屋を飛び出て廊下で鉢合わせたマネージャー。
俺のあまりの不機嫌さに
"ど、どうしたんです?"
吃りながら目を白黒させて。
「体調不良… 一人にして」
凡そ体調不良とは真逆のぶっきらぼうな物言いに某かを察したか
"了解です…お大事に"
追求せず 見送るだけに留めてくれたのが正直有り難くて
"ゴメン"
物分かりの良さに心ン中で手を合わた。
そんな良識を持つマネがいつまでもバイブらせるワケもなく…となると しつこいのは多分、相葉さんに泣きつかれた翔さん。
内容は見ずとも分かるし、癪に障るから無視を決め込む。
ほとぼりが冷めればバイブも止むだろう。
街中のデカい交差点で信号待ち。
飛び出してきたものの行く当てなし。
どーしようかと横断歩道の人並みを眺めながら…その向こうのビルに目が止まった。
シネコン…エスケープ先には在り来たりだけど見たいヤツもある。
タイミング良く信号が変わったのは行けって事か?…だよな。
勝手な解釈してハンドルを右へと切った。
