
飴と鞭と甘いワナ
第6章 HurryUp! episode 1
パニクってる女共を突破する、そんな大胆なコトあの常識人の手本みたいな相葉さんがするワケないから。
少し歩調を緩めて。
何気に騒ぎから距離を取りながら階段を探す。
階段なら幾分か人も少なかろ。
ショップとショップの狭間の先に踊り場が見えた。
とりあえず難からは逃れられたっぽく、ようやく一息吐く。
ラッキーなコトに灰皿もあるし。
あ、もしかすると簡易喫煙所だとか?…ま、誰か来たら逃げるだけだ。
とりあえず一服させて貰お。
灰皿の横の壁に背中を預けてタバコを燻らせる。
ユラユラ立ち上る紫煙をボンヤリと目で追いながら
"何やってンだ、俺"
思わず漏れた嘲笑は己れに向けての当て擦(こす)り。
"どーしようか"
ふと頭を掠めた『ツヴァイ』と云う響き。
いつだったか相葉さんが連れて行ってくれた趣味の好い pool bar。
小柄で無愛想なオーナーと喋りの上手いスタッフとの心地好い空間を思い出した。
確か22時からって言ってたはず。
場所はウロ覚えだけど検索すれば何とか辿り着けるだろう。
善は急げ。
一気に階段を駆け降りた。
