
飴と鞭と甘いワナ
第6章 HurryUp! episode 1
覚えのあるパチンコ屋。
脇の階段を上がった先、古びたドアとそれを照らす年代物の小さなスポットライト。
その覚束ない灯りに浮かび上がるアンティークなnameboard。
『zwei』(ツヴァイ)
恐る恐るドアを開けて。
その隙間に顔を突っ込んで様子を窺おうと…
「うわっ」
いきなりそのドアを引かれて転がる様に中へ入った。
「いらっしゃい」
相変わらず人懐こいスタッフの…確か"ヒナ"って呼ばれてたソイツが
「久しぶりやん」
西の方のイントネーションで俺を招き入れてくれた。
その軽さが…妙に白々しい。
今、コンマ何秒かだけど目線外したろ?
何げにスマホを雑誌の下に潜らすのも怪しいって。
ジリと詰め寄って
"な、何?何や?"
小っさく吃ってホールドアップする営業スマイルを目を眇めてジーッと見る。
薄っすいツラの皮の下に透けてる
"相葉くーん、来たでぇ"
LINEしたのがもう見え見え丸見え。
胸内で溜め息を吐く。
コイツ、嘘つくのが下手すぎ、目も当てられンない。
こんな間抜けが知り合いって…やっぱ此処はアイツのテリトリーだわ、納得。
