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飴と鞭と甘いワナ

第9章 1匙め


「ぉはよーごさいます」

顔馴染みの警備員のおっさんに声を掛けてエントランスを抜ける。

通りすがりに目の端でポストをチェック。

相変わらずチラシとDMで一杯になってて。

"これ以上は無理"ってポストが悲鳴あげてる。

小さい空間によくもこれだけ突っ込めるよな。

フランチャイズのピザ屋のメニューに水道修理の広告はマグネット付き。

デリヘルのチラシで微笑うおネェちゃんの顔面偏差値はイマイチ。

そン中に紛れてる封書だけを抜いてリュックに入れる。

あとは首尾良く傍に置かれてるゴミ箱にINするだけ。

「……ン?」

ヒラと俺の手から逃れたチラシが一枚 床に落ちた。

『オトコの料理教室』

殴り書きされた無骨な文字が斬新で手作り感満載なチラシ。

講師は誰だ?と名前を見れば

『大野 智』

俺が肩入れしてるイラストレーターと同姓同名なのは因縁か何か…か?

「へぇ…オトコが野郎に教えンだ」

"そこのアンタ!時間大丈夫?"

急かす警備のオッサンの声にチラシをポケットに突っ込んで慌ててマンションを飛び出した。

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