
飴と鞭と甘いワナ
第9章 1匙め
N side
男にもマリッジブルーってのは存在するんだろうか
彼女の家に挨拶に行って、やたらと歓迎されて
…全て順風満帆にいってるはずなんだけど
式をどうするかとか
新居をどうするかとか
話が上がる度に気が重くなった
何だか責任が一気にのし掛かると言うか
段々と “結婚“ ってものが負担に感じていた
もう自分だって30近い
世間からしたら、早くも何ともない
だけど
元々誰かとずっと一緒にいると言うのが苦手は俺は
彼女と四六時中一緒と言うのは正直息が詰まる
彼女の事は可愛いと思う
大事にしたいとも思う
ただ
“いつでもどこでも一緒にいたい“ 彼女と
“1人の時間を大事にしたい“ 俺とは価値観が違う
それだけの事
だから少し我慢すれば上手くいく
その為に、専業主婦を希望する彼女にも働いて貰いたい
外の世界を知ってれば、おのずと俺だけに執着しないだろうと期待した
代わりに、俺も家事を分担する事は厭わない
家事は苦手だけど
本当は面倒くさいけど
上手くやっていく為には、必要不可欠な事
「ねぇ、和くん」
ふいに呼ばれて、ハッとして振り返った
