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飴と鞭と甘いワナ

第10章 2匙め



『チラシに地図あるから…ンじゃ待ってます』

唐突にブチと通話が切れ、思わず唖然とスマホ見る俺。

そんな第一印象最悪なスタートだったにも関わらず 意外にも億劫かと思ってた週二回の講習が今となっては待ち遠しくてしようがない。

こんな浮き立つ気持ちはいつ以来だろ…それはきっとあの"二宮さん"のせいだ。

「……随分楽しそうな顔してるわね」

カツンと硬い音にはた視線を上げれば彼女がフォークを置いて

「何を思い出してるのかしら?」

ナプキンで拭った口元が意地悪そうにヒクと上がる。

「……失礼するわ、打ち合わせがあるの」

冷ややかな声。

長い髪を一振りして上衣を手にすると此方を一瞥もせずに彼女は席を立った。

テーブルに取り残された手付かずの冷めたパスタと俺。

そう云えば……ショーコさん、さっき俺を "アナタ"って…名前で呼ばなかったな。

その他人行儀さはどう云うコトなんだか考えるまでもなく。

高慢ちきな後ろ姿を見てると何だか腹の底から妙に可笑しげな感情が湧いてきて。

形振り構わず馬鹿笑いしたくなるのを温くなったワインと一緒に奥へ一気に流し込んだ。

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