
飴と鞭と甘いワナ
第10章 2匙め
近くの量販店で買ったエプロンと三角巾を鞄に突っ込んで。
今日で7回目の講習…ともなればお互いの緊張感も何となく解れてくる頃合い……な筈なんだけど。
「お疲れさまッス」
いつもの実習室…小学校の家庭科室のグレードアップ版…のドアを引いて。
見慣れたメンバー…仕事をリタイアした閑人なオッサン等の群れの向こう、隅の調理台に所在なさげに座ってた二宮さんがホッとした様に俺を見てから小さく手を振った。
二宮さん……
たまたま初日に隣り合わせたヒト。
"最初は笑顔で人当たり良く"
俺の…ま、一種の職業病みたいなもん。
二人一組で組んでと言われ、お互いに "あ、ヨロシク"的な爽やかなアイコンタクト交わす。
ニコニコしつつ配られたレジュメを読んでるフリしながら隣を盗み見する。
幾つなんだろ?
俺より小っさく見えンのは丸まった猫背のせい?
スーツは来てないからサラリーマンじゃない?…いやいや休みなのかもだし。
既婚者…じゃないな、うん。
左手をすかさずチェックしてる自分に笑う。
だってさ、これからパートナーになるかも…な相手のデータは出来るだけ欲しいじゃん。コレ基本だろ?
