
飴と鞭と甘いワナ
第10章 2匙め
…家に帰れば、彼女がいる
まだ一緒に住んではいないはずなのに、ほぼ “同棲“ に近い状態で俺を待っている
だからと言って食事が出来てる訳でもなく
“ご飯食べにいこ“ と当たり前にねだってくる
最初は待っている彼女が可愛かった
だけど “結婚“ を控えた今になってまで、食事一つ作らず、約束の仕事を探す訳でもなく
相変わらず口を開けば、やれ指輪だドレスだと喋りまくる彼女の存在が疎ましく感じるのは、仕方ないと思う
そんな中での料理教室が、今では唯一の息抜きになっていて
相葉さんと話すのが楽しみになっていた
この間
自転車にぶつかりそうになった時、力強い腕に引っ張られて抱き締められるような形になった時
何故か心臓がドキドキした
同じ男から見ても、格好いいと思った
…そう言えば、その前に
さらっと “いいオトコが台無し“ って揶揄おうとしてやけに恥ずかしくなった事もあったっけ
変なの
…彼女に疲れて、俺の思考回路おかしくなってんのかな
ここでふと、思い出した
そう言えば俺はまだ名刺も渡してなかったっけ
