
飴と鞭と甘いワナ
第10章 2匙め
「…二宮さんはさ、仕事何してんの?」
俺より先に、相葉さんの方から聞いてくれた
「あ、ごめん。…俺は極々フツーのサラリーマン」
そう言って鞄に突っ込んだ名刺ケースを取り出して、中から1枚取り出した
「…これのどこが?」
「え?」
「だってこの会社、超一流じゃん」
「…名前だけだよ」
そうなんだ
会社名だけで言えば、そう言われる事が多い
だけどその中の部署によっては
普通の一般企業と全然変わらないし、給料だって決して高くない
「けど、就職率すごいとこじゃん。エリートなんだ、二宮さん」
「それが嫌なんだよ」
相葉さんは素直な “一般的“ な感想を言ってるだけなのに
…俺だって相葉さんに失礼な事言ったのに
本当俺って心狭い
「そか、悪い」
悪くないのに相葉さんが謝って
また気まずくなるのも嫌だから、思わず俺から声を掛けた
「今日、この後予定ある?」
家に帰れば彼女が絶対待ってる
それがうんざりだったのと、相葉さんをもう少し知りたいと思ったのと
…何かもう、失礼を承知で色々聞いて貰いたくなっていた
