
飴と鞭と甘いワナ
第3章 scene Ⅲ
"そろそろ時間…行こ"
って歩くニノの隣に並ぶ。
足元の短い影に真っ昼間だったんだって。
こんな時間に会うなんて滅多にないから…変な感慨スイッチ、ちょい入った。
「雅紀?」
呼ぶ声に向けば自販機の前で俺を見てるニノ。
あ…もしかして奢ってくれ…
「喉渇いた」
出された手には俺だけに見える字で
"130円ちょーだい"
って書いてある。
また俺!?
ガコって缶の出る音とニノの笑顔を無意識に天秤に掛けてる俺。
貧しい財布事情なのにも関わらず圧倒的に傾いてンだよな、ニノの笑顔に。
「…で何勝負?」
"じゃんけん?"
小学生かっつーの。
グーチョキしてる手が可愛い。
「ゲーム?」
オマエの得意分野で勝負する馬鹿が何処にいる。
「あ、ババ抜き?」
茶化すのは俺が勝ったコトないの知ってるから。
"この野郎"
ってヘッドロック噛ませればギブギブって子供みたいなニノ。
どんなニノ見ても"好き"って変換しちゃう俺って…。
どうにもならない想いにまた凹んだ。
