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飴と鞭と甘いワナ

第1章 scene Ⅰ


N side

「ん…?」

後ろのポケットに突っ込んでいたスマホに、メールの受信を告げる短い震動。

ふと、壁掛け時計を見れば…上がる15分前。


…やっぱりな
そろそろ来るような気がしてたんだ

いつもならカバンに仕舞いっぱなしにしてるのに、今日に限って持ち歩いていたのは

あいつとの、付き合いの長さってやつ。
だいたいの行動パターンは読めてるっつーの。


スマホを取り出してメールを開いてみれば

ー…ほらね

思わず笑ってしまった。


俺さ、仮にもこの店の指名トップだよ?
その俺に、無料でやって貰おうなんざ

本当、図々しいっつーの。


でもまぁ、それを許しちゃう辺り…俺も大概な気はするけどね。


とりあえず、床を掃いていた手を止めて

『まだオーナーいるから、21時半にして』

それだけを返信してから、再び掃除に取り掛かった。



この店に勤めて5年。

オーナーから是非に、と前の店から引き抜かれ
…たまたま出場した大会で何故だか金賞を取った事から

あっという間に俺はトップスタイリストになり、オーナー補佐の地位に付いていた。

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