
飴と鞭と甘いワナ
第3章 scene Ⅲ
N side
じゃあね、と雅紀に手を振って別れてから
気付かれないようにその後ろ姿を見送った
ー…貧乏人に奢らせたの、可哀想だったかな?
なんてほんのちょっとだけ背中を見たら思ったりもしたけど
まあ、勝負は勝負。
…俺はすぐに引いたのに、食いついたのはアイツだし
負けたのも俺のせいじゃない
だけど本当は
こんなんで呼び出した訳じゃなくて
あの日
どこか落ち込んだ様子のまま帰した事がずっと引っ掛かってて
だけど、どう切り出して良いのか迷っていたら
…あっという間に1週間はゆうに過ぎていて
とりあえず顔見たら、何か言えるかもとご飯に誘い出した…のに
雅紀の姿を見たら、悪戯心が湧いてきてしまった
雅紀との賭けに負ける気がしない自分もどうかと思うけど
お約束のように雅紀も負けてくれちゃうんだもん
そうなったらもう、後には引けないじゃん
あそこで
“冗談だよ“ …なんて言った処で
それこそ雅紀の小さなプライドが許さないだろうし
ー…って、何やってんだろうな、俺
