
飴と鞭と甘いワナ
第3章 scene Ⅲ
『はぁ?!ふざけんなよ!』
電話の向こうの潤は、怒りモード炸裂で
それでなくても鋭い目付きが、極悪なそれに変わっているのが容易に想像できる
そりゃそうだ
だって潤は既に店に入っていて
…オープンの準備を終わらせてたんだから
“来たら、覚えとけよ“
なんて言う怖い捨て台詞に加え
ブチッと通話を切られた俺は、その怒鳴り声に益々頭痛を覚えながら
「潤、すっげぇキレてるけど…」
状況を伝えるべく、大野さんを揺り起こした
「…俺の大事な睡眠奪ったのはどなたですか」
ブランケットから顔も出さず、恨めしげに言う大野さん
「俺です、…すいません」
だって仕方ないじゃないか
モヤモヤしすぎて一人じゃ消化出来そうになかったんだよ
…とは、口にはしない
出来るわけない
やがて
「あー…もうっ!」
ガバッとブランケットを剥ぎ取った大野さんが
不機嫌そうに起き上がって
俺の目の前にドカッと胡座をかいた
「にのさー…」
「はい…?」
俺を見つめる大野さんの目は
…ちょっと怖い
