
飴と鞭と甘いワナ
第1章 scene Ⅰ
…なんてのは、【美容師】としての俺。
本心は、そんな事思ってない。
雅紀が俺に泣きついてくる時は、…大抵何かしらあった時。
何かやらかしたとか、酷い目に合ったとか。
それを聞くのが面白くて仕方ないんだよね。
…何て言うの?
アイツの話を聞いてると、ウズウズしてくるんだよ。
ちょっと突っつきたくなるっつーか
更にいじり倒したくなるっつーか
アイツって、俺の中のSな部分を刺激してくれちゃうんだもん。
それがさ、…俺には堪らなくて。
たまに変なスイッチ入っちゃうと、違う意味で啼かせたくなって…
軌道修正図るハメになるけどね
だってさ、話しながらビー玉みたいな真ん丸の目を少し潤ませる時なんか
…ゾクゾクしちゃうよ?
誘ってんのかって言いたくなるんだから。
時刻はそろそろ約束の…21時半
雅紀は、必ず時間通りに来るヤツだから…準備するか。
今日は、入荷したばかりの炭酸シャンプーとトリートメントをしてあげる。
女の子みたいなサラサラの髪は、大事にしてやりたいから。
カットは…見てから考えよう。あの髪は、切りすぎると勿体無い。
