
飴と鞭と甘いワナ
第3章 scene Ⅲ
上目使いはニノの得意戦法。
猫みたいにスルンと鮮やかに俺の下から抜け出て。
キスの体勢はあっさり撤収。
「雅紀……」
"手取り足取り……ヨロシクな"
俺の右手を恭しく掲げて。
ニヤリと笑う目とペロリと舌舐めずりする口。
うわぁ…………ブルった。
……………………嫌な予感。
いやいや、ここは俺のホーム。
アウェイに踏み込んでるニノに好き勝手にはさせないもんね、うん。
*
"構え方から教えてよ"
っつーからさ………
とりあえずキューを持って構える俺の後ろ
「姿勢って大事ですよね?」
らしくない丁寧な物言いにゾクとする。
どんな顔してンの、ニノ?
エマジェンシーコールの赤色ランプが点滅し出す。
背中に伸し掛かる重み。
「アナタの体位…じゃなくて体勢、真似させて…」
台に身体を押し付けられ、足も絡め取られてる。
肩から外されるサスペンダー。
シャツの裾が捲られる。
えっ?
何?何?何?
何が起こってる?
「……………ニノ?」
ギギギって軋みそうな首を後ろへ捻る。
目の前には邪悪な笑み。
「………………捕まーえた」
