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虞犯少年

第2章 愛故の冷酷



「明日香」



――なんでいるの…?


バッと顔を上げて見れば彼はすぐ目の前まで。その声は怒りを含む低い声で私はヤバいと思って肩を震わせた。射抜くような目つきは私を見て、次に隣に居た飯田くんに向けられる。



「おい、テメー。誰の女か分かってんのか?」



机を蹴っ飛ばしてざわざわしていた空気は一変。不自然すぎる静けさに包まれた。どっから情報を聞きつけた野次馬たちがたくさん廊下に集まる。食い入るような視線に私は顔を下げた。


飯田くんは顔を青くして気のせいか泣きそうだ。それもそうだろう。こんな不良にガン飛ばされて今にも殴られそうなんだから。


ごめんね、飯田くん…


すごく申し訳ない。キレたら手におえない彼は私が彼以外の男と話すのが気に入らないのだ。
この前だって街で知らない男の人に声をかけられた時、彼は無言で思い切り殴り飛ばして一方的な喧嘩になった。
首もとを掴まれた飯田くんは苦しそうに顔を歪める。

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