パパ、もう一度抱きしめて
第3章 合コンと彼
「悪いけど、もうちょっと席詰めてくれないかな?」
「…っ?」
その声は私のすぐ頭上から聞こえた。
パパとツーショットの写真を見ていたところで、慌てて携帯をパタンと閉じた。
見上げると、二十代ぐらいの男の人が私の目に飛び込んできた。
スラッとして、モデルみたいな容姿をしている。
「あっ…はい!」
私はすぐ壁際に寄って、その人のスペースをあけた。
気がついたら、数人のお客さんが私の他に座っていたのだ。
「ごめんね。ここ、いつもの僕の定位置なんだ。今日は誰か座ってるから珍しいなって」
「いえ、こちらこそ知らなくてすみません…」
「ぷっ。はははっ!冗談だよ。僕が怒ってると思った?」
「え、冗談…ですか?」
笑顔を浮かべたその人に、私はほっとした。
男の人と話すのが久しぶりだった。
私は高校からずっと女子校で。
♪〜♪〜
その時彼から携帯の音が鳴った。