パパ、もう一度抱きしめて
第4章 もう一つの家庭
遼太郎side
オペが終わって帰宅したのは、午後十一時を回っていた。
リビングのテレビからはスポーツニュースが流れ、ソファーで妹の美緒が眠っていた。
俺は美緒の肩をそっと揺すった。
「美緒、ただいま」
「…ん…お兄ちゃん?おかえりなさい…」
長いまつげでまばたきをして、潤んだ瞳が俺を見つめる。
「腹減ったけど…何かあるかな?」
「あるわよ。今温める」
ゆっくり体を起こしキッチンへ向かう美緒。
「先にシャワー浴びるよ」
「うん、わかった」
ーーーー
ザァァーーッ
熱いシャワーを浴びると、やっと頭が冴え渡ってくる気がした。
連日の夜勤とオペでかなりの疲労が溜まっている。
好きで志した道だから文句は言えないが、研修医の間は自分の時間もままならないほど激務なのがツラいところだった。
俺は荻野遼太郎
(オギノリョウタロウ)二十六才、独身。
二十四才の美緒との二人暮らしだ。
両親は俺達がまだ小学生の頃、病気で相次いで亡くなっていた。
だから俺は医者になった。
美緒だけは
美緒だけは、絶対死なせない為に……。