パパ、もう一度抱きしめて
第5章 ママのいない夜
優作side
ライトに照らされた梓の頬はほんのり赤く、潤んだ瞳がオレを惑わす…。
だめだ、もう理性がきかないっ。
今にもその唇に吸い寄せられそうに近づいた時。
“愛してるわ"
「う…っ!」
突然蘇った理沙子の声に、オレはハッとなった。
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それは、昼間会社で受け取った電話だった。
『そういう事なので、今日はお母さんの所に泊まるから、梓をよろしくね』
「そうか…。わかったよ、お義母さんにゆっくりついててやってくれ。家の事は心配しなくていいから」
『ええ、お願いします。それから、』
理沙子は最後に、何かを言いかけた。
「ん、何だい?」
『やっぱりいい』
「言えったら、気になるだろ?」
『…愛してるわ、あなた』
「オレだって、愛してるよ。どうしたんだ?急に。
一泊ぐらいでなんだよー』
『ふふっ。そうね、変だわ私。じゃあね』
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オレは梓のおでこにそっと口づけると、身体を離し背中を向けた。
「パパどうしたのっ?何でそっちを向くのよ、ねえってば…」
「…」
梓がオレの背中に顔を埋め、抱きしめる。
だがオレは
もう振り返らなかった……。