パパ、もう一度抱きしめて
第10章 偶然のドライブ
ママに遅くなるとメールで伝えると、遼太郎さんと車に乗った。
「じゃあ行こうか」
「はいっ」
二人はシートベルトをしめた。
遼太郎さんとこんな展開になるなんて、まるで夢みたいだった。
ふと私は、ダッシュボードの上に目がとまる。
「かわいいですね」
「ああ、それね。妹が置いたんだ」
それは、白くてモフモフしたアルパカのぬいぐるみだ。
女子なら好きそうなものだった。
「妹さんがいらっしゃるんですか?」
私はちょっと意外に思った。
「うん。うち親が早くに亡くなったから、ずっと妹と二人暮らしなんだ。でもその妹も、そのうち出ていっちゃうんじゃないかな…」
「…っ」
妹さんと二人暮らしと聞いて、私はずっと思い違いをしていたのだと気づいた。
そして遼太郎さんの顔が一瞬、寂しそうに見えたんだ。