パパ、もう一度抱きしめて
第10章 偶然のドライブ
優作side
「あなた、梓帰って来たわよ」
理沙子がリビングに戻って来た時、オレは動揺を悟られまいとしていた。
「ああ」
「それがね、驚かないでよ?
梓、男の人に送ってもらってきたの。それも、すごく素敵な人に!」
声を弾ませる理沙子に、オレはテレビから目を離さずに答えた。
「それは良かったじゃないか。梓だって年頃の娘なんだ。ボーイフレンドのひとりぐらいできたって、おかしくないさ」
「ほんとにそう思ってる?…ひょっとして聞いてたりして。玄関での私達の会話を」
「は?ばかいえ、オレは何も聞いていない」
「くすっ」
「…っ」
そうだよ。
オレこそ、いつまでたっても子離れできない父親だ。
梓が早く、いい相手と出会ってもらわないと困るのに
いざそうなったら
こんなにも焦っている。