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迷霧

第2章 2

「おい、汚い手で触んなよ!」


 鈴原さんが慌ててその人物に文句を言う。


「わっ、人がいたんだ! すみません!」


 その人物はビックリしているようだった。
 この視界では仕方ない、近くまでいかないと相手がどんな顔をしてるのかさえわからない。
 でもそこまで怒るのもどうかと思う。自分だって人のバイク、ベタベタ触ってたくせに……。


「こら、空くん。ダメでしょ」


 霧の中から別の男の声が聞こえてきた。
 二人並ぶと、シルエットが親子のように見える。
 もしかして『空くん』は声からしても幼い子供かもしれない。


「ほんとすみません、この子スポーツカーが好きみたいで……」

「あんたの子供かよ、ちゃんとしつけとけよ」

「いえ、僕の子供ではないんですけどね。いやぁ、すごい霧ですね。前が全く見えなくて焦りましたよ」


 二人はどうやら親子ではないようだ。
 背の高い方は落ち着いた話し方からして三十代か四十代か?
 

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