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迷霧

第3章 3

「やだ、そんな怖い顔せんといてや。楽しくやろな、陽太っち」


 ……っち!?
 朱里さんはニヤニヤ笑ってる。
 昭さんはそんな朱里さんを気にも止めず、ずんずんと奥へと歩いていく。
 やっぱりグループ、変えてもらえば良かった……。


 Aグループは奥から。Bグループは手前、赤い屋根の家から聞き込みをすることになった。


 民家は昭和に建てられたような木造の家が多く、中にはそれよりももっと古くて、今にも崩れそうな家もあった。


「う~ん、人のいる気配がしないなぁ」


 昭さんが呟く。
 確かにさっきから外を出歩いてる人もいないし、まだ昼間なのに生活音も全くしない。聞こえてくるのは、セミの鳴き声とカラスの鳴き声だけ。


「暑いからみんなクーラーかけて引きこもってんちゃうん~」


 朱里さんが胸元のTシャツをパタパタさせながら言った。


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