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迷霧

第3章 3

 よく見回すと、オレたちが通ってきた獣道以外にも、細い脇道がいくつかあった。
 でもどれも車が通れそうな幅の道ではない。オフロードバイクだったらなんとか行けるかもしれないが……。


 だったらあの軽自動車はどこから入ってきたのか? よそ者にはわかりにくい裏道があるんだろうか?


 暑さと喉の渇きのせいか、オレは少しイラッとしながら、目の前の家の二階の窓を見上げてみた。
 カーテンが少し揺れた……ような気がした。


「じゃあ、まずはここから」


 昭さんがその家の玄関のブザーを鳴らす。
 しかし音は響かず、壊れているみたいだった。


「すみませーん、どなたかいらっしゃいませんか~」


 擦りガラスの引き戸を軽く叩いてみると、周りが静かなだけあってガシャガシャと音が響いた。それでも中から人が現れる気配はない。


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