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迷霧

第1章 1

「アウト・イン・アウトか…。してるつもりではあるんですけどね~」


 いつもオレは影山先輩の背中を追っている。
 影山先輩の真似をして走ってるつもりだけど、たまにオーバーランしてしまう。それはやっぱり乗り慣れてないからなんだと思う。


「まあ、楽しんで走ればそのうち慣れるさ」


 影山先輩が優しい眼差しで微笑む。
 もしオレが女子だったらドキッとするような表情で。


「そういえば、いいんですか? せっかくの夏休み、彼女と出かけなくて」

「……彼女なんていないよ」

「ああ、いいっすよ、オレに気を使わなくて」

「いや、ほんとに。彼女作るよりもバイクに乗ってた方が楽しいし……」


 そう言うと影山先輩は再びバイクに跨がり、エンジンをかけた。
 オレもヘルメットを被って、先輩の後を追った。


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