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迷霧

第4章 4

 オレはまだ見ていない部屋の障子を開けてみた。部屋の中央に髪の長い女性が立っている。


「……えっ……」


 女性はオレに背中を向けて立っていた。
 ずっと廃屋だと思って安心しきってたオレはその事実にしばし頭がついていかなくて──数分後、


「すみませんっ!!」


 やっとのことで頭を下げて謝った。


 やばい! 人がいた!!
 廃屋なんかじゃなかった!!


「あのっ……勝手に上がってすみません!」


 "その人"はオレの方に振り返ることもなく、ずっと背中を向けたまま立っている。
 何か言われるだろうと頭を下げて待っていたが、一向にお咎めがない。


「あの、すみませ……え?」


 オレは自分の目を疑った。
 よく見ると女性の足は浮いていた。床に着いていない足から順番に上へと視線を巡らすと、その人は上から伸びているロープを首に巻きつけて天井からぶら下がっていた。


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