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迷霧

第4章 4

「これ、人形ですよ」


 昭さんはソレの体をクルリとこっちに向ける。
 一瞬ビクッとしたオレだが、ソレはよく見るとマネキンだった。


「イタズラですかねぇ」


 イタズラ……? なんのために?
 ここに来た者を驚かすため?
 だから玄関の鍵が開いてたのか?


「陽太くん、大丈夫?」


 昭さんが立ち上がらせてくれる。


「ビビりすぎやで、陽太っち」


 朱里さんはオレの隣でケラケラ笑った。
 くそっ、二人ともどんな神経してんだよ……。


「本物はな、異臭がすごいねん。あと死後時間が経っていたら、体の重さで首は千切れる。昭さんが顔覗いたのは、顔がうっ血してるか確かめるためや、そうやろ?」


 朱里さんの言葉に昭さんが頷く。


「なんでそんなに詳しいんですか……」


 朱里さんの話を聞きながら想像してしまったオレは、胃液が逆流してくるのを感じて吐きそうになった。


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