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迷霧

第5章 5

 歩きだそうとすると背後から「鳥居に着きましたよ」と昭さんの声が聞こえてきた。


「あ……」


 振り返ると、目の前には朽ちた鳥居があった。
そして根元にはドクロの形をした石も。何回見ても不気味で気持ち悪いが、とりあえずここから出られることに安心したオレは足早に鳥居をくぐった。


 みんなまた黙々と歩き出した。
 来るときはこの辺りまで霧が出ていたけど、今は木の隙間から青空が見えている。ホッとしたオレだけど、すぐに目の前に飛び込んできた光景に愕然とした。


「……えっ……」


 たどり着いたのは休憩所ではなく、赤い屋根の家の前だった。軽自動車もある。


「なんでっ……」


 オレは今歩いてきた道を振り返った。
 分かれ道はなく、ずっと一本道だったはず。


「廃墟に戻ってきてしまいましたね」

「……これが狐に化かされたということかしら」


 あくまでも落ち着いた表情で、昭さんと恵美さんが呟いた。


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