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迷霧

第5章 5

 狐に化かされた……?


「どうします? もう一度、確かめてみます?」


 昭さんは一人一人の顔を見渡した。
 オレは動揺しながらも頷いた。こんなの納得できない……現実的じゃない。
 それは影山先輩も同じだったらしく、険しい顔をしながら頷いていた。


「うちは疲れたから、ちょっと休憩するわ」


朱里さんは指を舐めながらそう言うと、ポテトチップスの袋をクシャッと潰した。


「休憩って、もしはぐれたらどうするんですか」


 オレがそう言うと、朱里さんはフッと笑った。


「陽太っち、心配してくれるん? ……ええよ、無理していい人ぶらんでも」

「え……」

「気味悪いからここから出たいんやろ? 他人とは関わりたくないんやろ? でもうちは気味悪いと思わへん、もっとここにいたい。だからええよ、うちのことは気にしなくて」

「……」


 図星だった。
 確かにオレは朱里さんのことそんなに心配していない。むしろ輪を乱さないでくれと思った。


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