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迷霧

第1章 1

「彼はまだ乗り始めたばかりなので、ライディングの練習をしてるんです。というか、ハングオンすれば速く走れるわけでもないと思いますが」


 影山先輩がすかさずフォローしてくれた。
 それを聞いたチャラ男は小さく舌打ちすると、今度は影山先輩のバイクをジロジロと見て、更に勝手にバイクに跨がろうとした。


「ちょ──」

「鈴原くん、お待たせ」


 オレが注意しようとしたその時、白いワンピースを着た女性が目の前に現れた。
 肌は透き通るような色白、髪はウェーブのかかった茶髪が背中まであって、パッと見お嬢様という感じ。


 ──チャラ男の彼女?
 思わずジッと女性を見ていると、チャラ男が得意気な顔をして女性の隣に立った。


「凛音(りおん)、喉乾いてない? 何か買ってこようか?」

「……なんで急に呼び捨て? まだ車に水があるから大丈夫。それよりも彼らは鈴原くんの知り合いなの?」


 どうやらチャラ男の彼女というわけではなさそうだ。

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