LIFE
第21章 つかまえたい!〜scene4〜
「タクシーで帰る?拾うよ?」
どこまでも優しい。
こくり頷いて歩道の端まで一緒に歩いて流れる車の中、タクシーを見つけては手を挙げるけどなかなかつかまらない。
「本当にすみません。」
「いいんだよ。気にしない。
こんな夜もあるよ。
俺としてはもったいないって思うけど…あははっ、そう、こんな夜もあるよ。」
「こんな夜?」
「そ、こんな夜。」
初めて会ったのにこの人に胸の内を聞いて欲しいと思った。
そろそろと見上げて見た顔はかなりのイケメン。
俺こそ、もったいないと思った。
ほんの少し。
「俺、どうしようもない。
どうしたらいいのかもわからなくて。」
脈絡のないことを言ってるのに、その人は黙って聞いてくれてる。
「自暴自棄にはならないで。
こんな可愛らしい人がどんな人を思ってこんななっちゃってるのか、わからないけど。
でも、すごく好きな人がいるのはわかるから。」
「…うん。」
「うまくいくといいね。」
「…どうだろ。」
そこまで話してた時に一台のタクシーが止まった。
さよならだね。
「送らなくて平気だよね?」
「うん。大丈夫。
…あ、あの…」
別れを寂しく思ってたら、
「またあの店で会えるような気がする。」
そう言って俺はタクシーに押し込められた。
「ありがとう。」
「うん。また。」
優しい人の笑顔を見た後パタンとドアが閉まった。