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第13章 るかと桃太郎

 桃太郎の顔は、部屋の中にいた時の刑事の顔じゃなかった。心の狭い男の顔だった。


「正直言ったらさぁ……俺、まりんの事が好きになったんだよね」


「えっ!!」


 突然の桃太郎の告白に、下里は面食らう。


「でも、まりんは松に付いていったじゃない。早く出て俺も追いかけてやろうって思って頑張ったんだけどさぁ……この通路を見た時に無理だって……きっと今頃、松に抱かれてアンアン言ってるよ……」


 そう言い切ると、階段を降りてスクーターを蹴り倒した。


「どんだけかっこつけても、誰もなんも俺には振り向いてくれねぇ!! 気に入ったもんはみんな他のやつに取られちまう!! 今回のオフ会も、勝負だと思って来たのにこのザマだ!! チャンスさえも掴めねぇ!! ハハハハ……るかを追いかけるだぁ? 子持ちのアラフォーなんか興味ねぇよ!!」


 桃太郎は声を張り上げて叫んだ。声が枯れるまで自分自身に笑った。


 下里は何も言えなかった。桃太郎の言ったことに反論出来なかった。



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