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第5章 時間を戻してからの、話

「なんか、ここに来た方、みんなオムライスかこれを頼むねぇ。まかないだから遠慮することないのに……」


 遠慮も躊躇もするって……。


 これがまかないで、注文がピザとか炒飯て……。


 ケンちゃんは再び厨房に立った。


「ムエちゃーん、控え室のお姉さんに、世界三大珍味の盛り合わせ出来たから、持って行って!!」


 ももっちさんだ……。


 さすがだわ……。


 スーツ姿の男性は、グラスに入ったお茶をグッと飲み干した後、ケンちゃんの肩をポンと叩いた。


「忙しいようだから、ちょっと戻るよ。またなんかあったら連絡頂戴」


 そう言って厨房から出ていった。


 ケンちゃんはその男に手を振ると、水場の上の棚を開けた。


「あ……しまった……」と、言って苦い表情を見せた。


「パン粉切らしてる……」と、ポツリと言った後、何気に真綾の顔を見る。


 ケンちゃんに直視された真綾は、直視し返すと、深く目蓋を閉じた。


「……ナポリタンできます?」


「かしこまりました」


 新たなオーダーが入った。


 すると、走るようにさっきの男が入ってきた。


「ケンちゃん、ごめん!! たこ焼きとサラダをシェルター1にだって。俺も行くハメになった」


「え!! でも、この方のごはんを……」


「とりあえず、ムエか広海に頼め!」


「え!! ムエちゃん、料理出来ないよ。広海くんもいてないし……」


「とにかく急いで、お姉さんごめんなさいね」


 真綾は思った。


『だから、なんで注文がたこ焼きなのよ……幅広いわね……』



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