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お姫様は海に恋い焦がれる

第3章 うさぎピンチ!二人きりの夜〜未来編〜


 春の息差しが微かに遊ぶ夜八時過ぎ、うさぎは穏やかな風を縫って緑の丘を下っていた。


 ネオ・クイーン・セレニティの風姿をといたうさぎは、同じく地場衛という一個人のそれに改めた男の腕にまといつき、もう何十年単位の付き合いになる仲間達の話題で盛り上がっていた。


「ねっ?美奈子ちゃんってば面白いでしょ。あっ、今度夜天くんとドラマ共演するんだよ。アイドル頑張ってるよね。そうだ、まもちゃん。ご飯どうする?」

「作るよ。ちびうさもお腹空かせてるだろう。今夜はピラフな」

「ストップ、まもちゃん、ちびうさはダメー。スモールレディ。でしょっ?」


 白にも優る透徹なパレスの裏手の斜面の麓に、西洋風の邸宅がある。

 うさぎと衛、そして愛娘と愛猫達の暮らしている場所だ。


 クリスタルパレスに居を構えなかったのは、平凡な生活を選んだからだ。

 うさぎや衛、守護戦士達が生来の姿に戻るのは、昼間に限る。

 ひとたびパレスを離れれば、うさぎも衛も一般市民だ。

 アイドルとして活動を始めた美奈子を始め、母親の病院を受け継いだ亜美、今や世界的なヴァイオリニストとして名を馳せるようになったみちる達は、行政の補佐と各々の生活を両立している。

 そして、衛も例にもれなかった。

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