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お姫様は海に恋い焦がれる

第3章 うさぎピンチ!二人きりの夜〜未来編〜




 うさぎは十時間振りの我が家に至った。

 明るく開けた玄関に、パステルピンクのお団子頭の一人娘が駆けてきた。

「お帰りなさいっ、ママ!パパ!」

「ちびうさただいま。寒くなかった?」

「うん!あっ、ママってばまたちびうさって言った。あたしにはスモールレディっていう名前があるんですからね?」

「あわっ」

「くく……うさ、さっきオレに注意したばかりじゃなかったか?」

「ママのヘンテコな癖だよね。ちびうさってだぁれ?ママはおっちょこちょいだから、どうせあたしを誰かと間違ってるんでしょ」

「むむぅ、二人していじめるー」


 三人、笑いながらリビングに場所を移した。

 うさぎはソファに腰を下ろして、適当なファッション誌を拾い上げた。

 ちびうさ──…と、胸中では呼びかけてしまう癖はそろそろ直さねばならないものだが、ともかく小さな一人娘は、母親が隣で娯楽に耽っていても、小学校の課題に没頭している。

 キッチンから、衛の立ち回る音が聞こえる。それから空腹を意識させる匂いがうさぎの鼻に流れ込むまで、さして時間はかからなかった。

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