とかして。
第2章 有料なら、受け取るってことだよね?
* * *
原因不明の大嵐が、ニュースで予報されていた。
あれからあたしは、さやかの家を通うようになっていた。
味ある家庭料理にありついて、身体の芯にまでしみる風呂に入って、さやかの寝具を半分借りる。
幸せ家族の厄介になる以外の夜は、かつてあたしの居場所だった廃墟で眠った。晦冥が世界を覆っても、破壊衝動があたしを襲うことはなくなっていた。
「杏子……」
あたしはさやかの匂いのしみた寝台に身体を投げ出して、下腹部の、言葉にするにははしたない場所が鈍く痛んだ余韻を噛みしめていた。痛覚遮断などという、もったいない真似はしない。
さやかの指には、無色透明の粘液と、赤い筋。
ちゅぱ…………
さやかは、あたしの中を泳いだばかりの指を咥えた。
「あんた、変態?」
「はは、杏子の味、めちゃウマっ」
はにかんだように笑うさやかは、いつか音楽に精通した坊やに向けていた目であたしを見ていた。
可愛い。
あたしはさやかを妹に重ねていたのではない。
狼藉な魔法少女を気取って、さやかを辱めようとした時、既に──…否、彼女に決闘を挑むより前から、あたしはこういう未来を思い描いていた。まさか現実になろうとは、もちろん夢にも思わなかったが、あの坊やになり代わりたい。あたしは遠目に名前も知らない魔法少女を偵察しながら、幸運な坊やに憤慨していた。
さやかは、あたしに似ている。そのくせ失いきっていない。
こいつを囲う世界は今でも綺麗で、あたたかい。
だのに、元の生活には戻れないんだ。
知らない内に、魂を引っこ抜かれたばかりに。