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とかして。

第2章 有料なら、受け取るってことだよね?



 てろ…………


「ひぃっ」

「何驚いてんの。ちょっと舐めただけだって」

(なんて色っぽい声出してんだよっ)

「はぁ、はぁ……」


「なーんてねっ」


 あたしの身体が軽らいだ。


 さやかはあたしを離れていた。


 彼女を感じて、彼女に顫えたあたしの抜け殻。にわかの喪失に寒気すら覚えたそれは、赤い本体と異様なくらい連結していた。


「…………」


(やっぱ、からかってただけだったのか……)


「杏子が良いって言ってくれるまで、待ってる」

「え……」

 さやかは、飄々とハンガーから着替えを下ろしていた。

 タオルを外して、下着をつけて、無駄な動き一つしないでせっせと身なりを整えてゆく。こいつは後ろを向いたところで、あたしに見えていることを分かっているのか。



「悪いね。手間かけさせちゃって」

「らしくないね」

「なんかもう、あんたのこと他人事じゃなくなっちゃったからね」

「…………」

「実はさ、魔法少女のテレパシーで、全部聞こえてたんだ」

「…………」


 それは、あたしのソウルジェムに危機が迫るに十分だった。


 じわじわ……どく……どく…………


「はぁっ?!!」


「自分を粗末にすんなよ、とか。ずっと一人ぼっちだった、とか」


「う そ だ ろ オ イ」


「それからね」


 さやかが振り返ってきた。


「あたしがあんたを大事にするっ「うわーーーーー!!!!!」





 のちに聞いた話によると、人の感情とは無縁の悪魔が、あたしの思考を、さやかに無許可で伝えていたらしい。


「君は、さやかに伝えたかったんだろう?魔法少女の伝達を円滑にサポートすることも、僕の役目だからね。例えば君は、電話番号をダイヤルして、本人に繋がったら怒るのかい?同じことだよ。君はさやかを呼んでいた。だから僕がテレパシーを繋いであげたのに、そういう物騒なものを向けられるなんて、不条理だよ」

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