とかして。
第2章 有料なら、受け取るってことだよね?
「はぁっ、はぁ……」
「杏子が好きだよ」
「ありがとよ」
「嘘じゃない。……この間あたし、杏子を待つって言ったよね。違うの。あの日あたし、恭介を見た。幸せになって欲しい、まどかと同じくらい長くつるんでる子がいてさ、彼女と一緒に。だから待って欲しかったの。名前も知らないイカれた男に八つ当たりして、手当のために無駄な魔力使っちゃって。あたしがあの日、杏子を抱いてたら、恭介の代わりみたくなっちゃう。……誰に分かってもらえなくても良い、でも杏子を誤解させたくない。杏子が、いててくれて良かった」
さやかは、あたしの指を撫でていた。そうしていなければいけないように。人肌に触れている間だけ、呼吸していられる人形のように。
「広い世界の、ほんの片隅に閉じこもってたんだ。あたし。暗い海の底に膝を抱えて、目に見える世界にばかりこだわって。始まる前になくしちゃったけど、これって、あんたに逢うためだったんじゃないかなって。ごめんね。愛されなくても、なんて。どうせ死んでる、なんて言っちゃって」
「──……」
「あたしはあんたを抱き締めたい。キスもしたい。でも、その、……杏子、血……ダメでしょ」
さやかの真珠のような頰が、刹那染まった。
あの宇宙人、どこまで伝えやがったんだ。
「…………」
「大丈夫だよ」
あたしはさやかの片手を握り直して、指の付け根に口づけた。
「確かに、昔のあたしはそうだった。格好悪いけど、夜が来る度、怖かった。ちょっとしたことでどきっとしたよ。父さんも母さんも、モモだってもういないのに、あいつらが、何度でもあたしの前からいなくなる──…たった一人残される、あの夜が、また来るんじゃないかって」
「…………」
「今は平気。それは、後悔もあるし、あたしは天国で父さん達に会えないんだなって思うと、情けなくなるよ。あるけど、あたしが教会でまた眠れるようになったのは、さやかのお陰だ。あたし達は、心と肉体を切り離されちゃったかも知れない。こんな身体にされちまったなりに、あたし達も、ほむらも生きてる。泣いたり笑ったり、怒ったり。痛かったり、楽しかったり。ちゃんと感じてるじゃん?この通り、さやかはここにいる。この家に、普通に生きてる。あったかいところにいるあんたが、あたしを安定させてくれる」
「…………」