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瞳の中の恋人 ~もう一つのプラチナデータ~

第4章 4 もう一人の俺

思わず身体の動きを止め、退こうとする浅間に

「やめないで・・・続けて・・・今だけ・・・抱いてほしい・・・」

ぐっと締め付けられる身体。
訴え掛ける眼差し。

いつしか浅間はまた腰を動かし始め、自分でも気づかないうちに頂点への最後の坂を駆け上っていた

「あっ、あっ・・・ん、んっ、んん・・・・っ」
「は・・・、くぅ・・・っ」

程なく二人同時に息を詰め、びくびくと震えながら熱を吐き出す



互いの息が整うのを待って浅間が口を開く

「神楽・・・」
「・・・何も言うな・・・私は今日限りで消えるから・・・」
「どういうことだ・・・」
「言葉通りだよ・・・私はいない方がいいだろう。DNA解析システムの方も順調だし、仕事の上でももう私は必要ない・・・これからはずっとリュウがあんたのそばにいてくれるから・・・」
「・・・そんなこと望んじゃいないぞ。俺も・・・リュウも・・・」
「・・・・・・」
「信じていない目だな・・・。最近リュウはよくお前の話をするんだ・・・いつか二人で故郷に戻って親父さんの墓参りをしたい、それからまだ残っているものがあれば作品を見たい、できれば自分でも何か作ってみたい。
今のお前とならそういうことが出来そうだ、と楽しそうに話していたよ」
「・・・嘘だ・・・」
「嘘じゃない。俺もそうだ。最初は確かに反発を覚えたが、今のお前は嫌いじゃない・・・
いや、もっとはっきり言おう。俺にとってリュウと神楽龍平は二人で一人の人間だ。切り離してどちらか一人だけと、なんて考えられない。これはリュウにも伝えてある。」
「・・・嘘だ・・・」
「じゃあ、お前はどうだ?確かに昔はリュウが消えることを望んでいたかも知れない。だが今、本当にリュウの全てが消えてしまったら・・・」
「・・・そんなのは・・・私じゃない・・・私の中には常にリュウが・・・・・・」

顔を両手で覆って、神楽は声を上げて泣き始める。
その細い肩に手をやり、自分の胸に抱き寄せた浅間。
気の済むまでこのまま泣かせてやろう・・・きっとリュウも今同じように泣いているだろう・・・。


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