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瞳の中の恋人 ~もう一つのプラチナデータ~

第5章 5 瞳の中の恋人



   ~5.瞳の中の恋人~


よく晴れた日曜日の朝。
神楽のマンションのキッチンから 笑い声が聞こえる。


「何だ、その不器用な手つきは・・・貸してみろ」
「あ、俺、オムレツね、チーズ入れて」

「私は目玉焼きが食べたい」
「龍平、昨日も目玉焼きだったじゃん。今日はオムレツにしようよ」

「今日も目玉焼きの気分なんだ。浅間、ターンオーバーにしてくれ」
「・・・何だ、それは?」

「え、レイジ知らないの?おじさんはダメだね~」


そこには 二人の姿しかないのに 会話は三人分・・・
笑いながら楽しそうに話している。




リュウを認めた神楽は 大きく変わった

仕事に対するプライドや真摯な姿勢はそのままに、
周囲の人への気配り、柔らかく変化した雰囲気に、
以前の傲慢さは影を潜めた

そんな神楽にとって 今やリュウは兄弟でもあり、
親友でもある、そんな存在になっている

仕事の時は口を出さずに見守っているリュウも 
家に帰ればすぐに現れ 
今日の出来事を神楽とあれこれ話し合うのが
毎日の習慣になってきた。



二人の間でどういう話し合いがされたのか、
週末 浅間と過ごす時間には 争う様子もなく 
リュウと神楽、どちらかの人格が数時間単位で入れ替わるようになった

最近ではそのサイクルもどんどん短くなり、
さすがにベッドの中でこそ入れ替わることは無いが、
普通に話している時に ひょっこりもう一つの人格が
顔を出したりする。
 

以前は全く印象が違った二人も 
近頃はずいぶん近づきつつあり、
普通に見ただけでは時に判断に迷うこともあるが、

間違えて名前を呼ぼうものなら 大変だ。

拗ねて口もきいてもらえなくなる。

そんなときに 必死で謝りながら機嫌を直してもらうまでの時間も 実は甘やかで楽しみな浅間



だが見分ける方法がないわけでもない。
同じ身体、同じDNAなのに 何故か色素の薄い茶色の瞳には 人格ごとの表情があり、浅間にとって今のところ一番確実に二人の見分けがつく方法・・・


瞳の奥をジッと見つめる。
聡明さを感じさせる透き通った琥珀色か
それとも甘く烟る蜂蜜色か



それを見極めた浅間は優しく微笑み、
ゆっくりと 愛しい恋人の名前を口にする。





END
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