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第14章 ファースト・ダンス

俺はその日、いつもと違う夢を見ていた。

初めてのホール・ダンス。両親に連れて行かれた大きな屋敷

「お行儀よくするのよ?お父様のお仕事関係の方のお宅ですからね。」

母親は、俺に何度も繰り返し言った。

車の窓の外にはきらきらと光る海、そして大きな屋敷が見えて来た。

「あなたと同じ年の女の子が居るんですって。とっても可愛らしい子みたい。」

父親に手を引かれて隠れるように立っていた女の子が居た。真っ白い肌に、真っ黒で真っすぐな髪。目が大きくてきらきらしていた。俺と目が合っただけで、隠れてしまった。

母親に呼ばれて、さっきと可愛い子とダンスを踊りなさいと言われた。お互いにモジモジしながらも、大人たちに言われるがままに数曲踊った。

「可愛いカップルね。」

皆が笑っていたのが俺は気に喰わなかった。周りを見回すと、とても綺麗な人が男性と踊っていた。曲が終わると俺はさっさと女の子と離れて、その綺麗な人をダンスに誘った。

「あら…。」

パートナーと思われる男性と顔を見合わせて、微笑んだ。透き通るような肌をした東洋の美女。俺は心を奪われてしまった。

…きっとあれがトーコさん…華の母親だったんだ。

身長差がかなりあったのにも関わらず、俺にリードをさせてくれた。優雅で、動くたびに良い香りがした。ダンスが終わった後、トーコさんは屈んで俺にどうもありがとうと言ったんだ。

“Would you marry me?”

俺には、その時彼女がどこかのお姫様に見えたんだ。つい自然に出てしまった言葉だった。

「お引き受けしたいけど、残念ながらわたしは結婚しているの。」

あの人は優しく微笑んだ。

「プロポーズをありがとう。とっても嬉しいわ。」

多分そんなようなことを言われた気がする。

俺は飽きてしまって、他の男の子達とサッカーをして遊んでた。華は、柱の陰からみていたように思う。ボールがプールに落ちてしまい、取ろうと思ったが、結局取れずに皆が諦めて、部屋に入った。

その後、大人たちが騒いでいたが、その理由が思い出せなかった。

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