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第16章 カレントが運んだ切ない夜

一生懸命真啓は右側を指さしている。3人とも同じ方向を指さしていた。

…え?でも左側の方が陸にあがれそうな気がするんだけれど。

あたしは左側を指さした。すると3人とも手で×サインを作った。何度も何度も右を指したので、あたしはバタ足で右方向へと進んだ。真啓がこちらに泳いできて、少しづつあたしとの距離が縮まっていく。
その間にも沖へと流され続けた。

――― ひやり。

足の下に冷たい水の感触がした。一生懸命に足を動かすのに、ぐんぐんと流されて、夏やリツも米粒の様になってしまった。

「怖い…。怖い…真啓っ!助けてぇ!!」

真啓との距離が少しづつ近づいて来た。

「右…だ。」

真啓の声が聞こえ始めた。

「岸に向かって…駄目だ!」

…えっ。

「右手…平行に…泳いで!」

真啓の声が聞こえただけで安心した。
徐々に真啓が近づいてくるに従って、あたしは恐怖が薄らいで、ほっとすると涙が止めどなく流れ始めた。

「華ちゃん!右手の方向へ岸と平行に泳いでっ!!!」

真啓が言っていることがやっと聞こえた。

「判っ…た。」

あたしはしゃくりあげ乍ら大きな声で答えた。あたしたちは岬の裏側まで来てしまいそうな勢いで流されていた。真啓が近くまで来てとうとうあたしの浮き輪を掴んだ。

「まぁひぃろぉ。」

あたしは思わず涙が零れた。とっても情けない顔をしていたに違いないけど、真啓はいつもみたいに優しく微笑んだ。

「華ちゃん大丈夫だよ。さぁ一緒に泳ごう。こっちだ。」

あたしは一生懸命足をバタバタさせた。あたし達は何も話さず泳いだ。

「離岸流って言ってね、時々出るんだよ。その名の通り、沖へと引っ張られちゃうんだ。でもね、岸と平行に10mも泳げば抜け出せるからね。さぁもうちょっとだ頑張ろう。」

真啓の声はとても落ち着いていて、あたしにニコニコと笑いかけていた。

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