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第3章 Prototype

あたしは前日から全く眠れずに過ごした。パパはテスト前なのにと眉を顰めたが、これだけは譲れない。帰りはダディがお迎えに来るという約束をしていた。

「ちょっと…リツ。今日の洋服気合い入ってない?」

黒革のジャケットに中は真っ白のふわふわワンピース。厚手のタイツを履き、少しゴツめのブーツだった。

「あったりまえでしょう?だって超近いんだよ。目があったらどうしよう♪」

始まる前からあたしもリツも興奮気味だった。最前列の中央。

「ねぇねぇあたしのほっぺたちょっと抓ってくれる?ほんと夢みたい。」

パフォーマンスが始まる前からみんな立ち上がっていた。

ユウヤが出てきた瞬間、黄色い歓声とウォーという野太い声が上がった。ファン層が男女半々の珍しいグループだ。

汗を飛ばしながら歌い続け、その甘い歌声に心が痺れた。

どうすれば、こんなに心に沁みる詩を書けるんだろう?ステージの上のユウヤと何度も目があった気がした。
「こっち見てる!ユウヤがこっち見てる!」

リツは興奮して、あたしの肩をバンバンと叩きながら、一生懸命ユウヤに手を振っていた。

お陰で終わるころには、左肩が腫れている気がした。最後から何曲目かで、ユウヤがカラーボールを何個か投げた。それにはサインが書いてあって、色紙などにサインを書きたがらないユウヤのサインは、オークションなどでも高値で取引されている。

――― キャー!!ユウヤぁー!

ボールが投げられるたびにその方向に人が集まった。
リツが一生懸命手を振ってこちらに投げて貰うようにアピールをしていた。

――― ヒュッ。

そのボールはあたしたちの席周辺に投げられた。リツはさっと取りに行ったが、少し遅れたあたしは、他のファンにもみくちゃにされて、転んでしまった。硬い誰かのブーツがあたしの額に思いっきり当たった。

――― ゴンッ。

鈍い音がした。他の場所にユウヤがボールを投げ、あっという間にファンは散った。



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