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第3章 Prototype

「いたたた。」

リツが慌ててあたしを起こしてくれた。

「華っ。大丈夫?」

リツの手にはサインが入ったボールがしっかりと握られていた。

「あ…取れたんだ。凄いね。」

あたしはびっくりしてリツと喜んだ。

「ちょっと…華。血が出てる。」

あたしは慌ててハンカチで額を押さえると、血がじわじわと沁みてくるのが判った。あたしは血を見るのが駄目だ。見ているだけでクラクラしてくる。

アンコールの曲はあたしは席に座って聞いた。
すると係員がやって来た。

「ちょっとこちらへ…。」

あたしは自分の洋服に着いた血を見ないようにして歩いた。ひとりで大丈夫と言ったが、リツがついてきてくれた。

その部屋はステージの裏にあり、大部屋のようでスタッフがバタバタと出入りしていた。

薬箱を持ってきたのは、Prototypeの敏腕マネージャーの黒田だった。

「押されて転んじゃったんだね。ちょっと見せてくれる?」

あたしは押さえてたハンカチをそっとはずした。額から頬へタラタラと生暖かいものが流れてくるのが判った。

「ちょっと深いね。これは病院へ行った方がよさそうだね。」

あたしは外したハンカチが真っ赤な血に染まっているのを見て貧血を起こした。黒田はあたしを抱え上げ部屋の隅にあるソファに寝かせた。

「頭 打った?救急車呼びましょう。」

あたしは慌てた。

「あっ…あの。父が迎えに来るんです。父はお医者ですから大丈夫です。」

「では、お父さんにここに来てもらいましょう。」

…ダディは大丈夫だけど、パパに怒られちゃう。

目を開けるとまだくらくらしたので、あたしはリツに携帯を渡した。アンコールが終わり、物凄い拍手が外から聞こえた。

「本当にごめんね。」

凄く楽しみにしてたのに、こんなことになっちゃってリツに申し訳なかった。

「何言ってるの!最前列で、サインボール貰えて、もう今日は夢の様な時間だったよ!!」

騒がしい一団が部屋に入ってきた。

「ユウヤ!!ホンモノ?!」

リツが大声で叫んだ。

…あたしも見たいけど…駄目だ。悔しい。

「この子達どうしたの?」

ユウヤが傍にやって来てマネージャーの黒田に声を掛けた。



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