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第19章 恋の切なさ

まだ誰にも言ってないんだ。もしコンクールに入賞したら、ウィーンへ1年間留学しようと思ってるんだ。大学は入学してすぐに休学になっちゃうと思うけど。」

あたしの胸がチクッとした。

…もうそこまでちゃんと決めているんだね。

「真啓にはピアニストにもお医者にもなって欲しいけど、一緒に遊ぶ相手が夏とリツだけになっちゃう。」

…なんだろうこのツーンとするような感覚は。

「あれ?空くんは違うの?」

「いやだ~っ。あんな奴友達じゃないよっ!憎まれ口ばっかり言うんだよ。」

「いつもふたりで楽しそうに喧嘩しているから、てっきり僕は、華は空くんのことが好きなのかと思ってた。」

真啓の大きな目がじっとあたしを見つめた。

「無い…あり得ない。無いからっ!!」

…なんであんな奴なんかと。仲良く喧嘩って…無いからっ!

「そっか…なら良かった。僕は、空くんには勝てそうに無いから。」

真啓は満面の笑みを浮かべた。

「勝てそうに無い?って何が?」

「あ…の…勉強とかスポーツとか?」

「そんなことないよ!」

真啓は慌てて言葉を付け足した。

「確かに、あいつの性格の悪さは、誰にも勝てないねっ!!ダントツで一位だ。」

あたしたちは空を仰いで、何も話さず花火を眺めていた。ふたりの間の沈黙はいつも苦にはならなかった。真啓には頑張って欲しいけど、やっぱり離れちゃうのは寂しい。その話を聞いてから、なんだか胸が少し重たい気がした。

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